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2017/02/01
コア・バリュー経営対談(前編)

≪なぜ今「コア・バリュー経営」なのか≫

松本)本日は、企業文化を強さの源泉とする経営手法として「コア・バリュー経営」を開発、その導入メソッドを確立し様々な企業の組織変革を支援されている石塚先生と、当社も実践しているこの「コア・バリュー経営」について考えていきたいと思っています。ではまず、なぜ今、「コア・バリュー経営」が求められているのかということからお聞きしていきたいと思います。

石塚)経営学において、何十年も前から企業文化について研究されてきましたが、特にここ10年くらい、企業文化が以前に増して重要になってきたといわれています。2008年のリーマン・ショックが起こった際に危機を乗り越え、大きく飛躍した企業はどこも企業文化を重視しているところばかりで、そのことが一層注目されたわけです。

松本)企業文化が強い企業をつくっているわけですね。

石塚)その背景には、90年代半ばから起きたネット革命があるのです。インターネットが経営環境を激変させました。その最たるものは、一般の生活者が大きなパワーを持ったことです。ネットさえあれば世界中の情報を検索し、世界中の人とつながることができるようになったからです。

松本)生活者が自ら情報発信もできるようになりましたね。

石塚)生活者は欲しい情報やものを世界中から手に入れられるようになり、企業はそんな生活者一人ひとりのニーズに応えなければ生き残れない時代になったのです。

松本)そういう時代において、なぜ企業文化がより大切になったのでしょうか?

石塚)3つの要因があります。まず“カスタマー・エクスペリエンス(顧客体験)”の重要性です。従来、企業は顧客をマス(集団)ととらえ、マニュアルを用意して対応してきました。しかし、先述のように生活者一人ひとりのニーズに応えるためには、到底マニュアルでは対応し切れないのです。「その顧客が心地よい」というエクスペリエンスが提供できなければ、満足してもらえないからです。顧客が購入先を決める際に最も重視するポイントは、「自分の感情を理解してくれる」こと。ですから、接客するスタッフが“任意の心”でその顧客が満足する体験を判断し提供しなければなりません。

松本)なるほど。しかし、スタッフがてんでバラバラに異なるサービスを提供しては問題がありますね。

石塚)そのとおりです。では、どのようにしてレベルやスタンスを統一感のあるものにまとめるのか。その要点が、企業の中核となる価値観“コア・バリュー”なのです。例えば、あのアマゾンが震撼したといわれるネット通販のザッポスは、“サービスを通じてWOWを届けよ”といったコア・バリューを掲げています。これに基づき、「顧客満足のためなら、ほとんど何をしてもよい」という絶大な権限がコンタクトセンターに与えられています。反対に、マニュアルも台本もありません。社員が自主的・自律的に顧客サービスを手掛けつつ、ザッポスならではの一貫したブランド体験を提供し、リピート率75%というロイヤリティを育んでいます。スタッフのモチベーションも高まり、3年間で年商を倍増させた驚異的な成長をもたらしたというわけです。

松本)“コア・バリュー”で社員の心が一つになり、個別の顧客満足のための特別なサービスを自立的かつスピーディーに提供できることが大きいのでしょうね。あとの2つの要因とはどういったものでしょうか?

石塚)2つめは、イノベーションの重要性です。競争環境の厳しい世界にあって、企業のイノベーションは何も一部の中核社員だけに任せればいいわけではなく、部門に関係なく全社員が参加する任意の活動にすべきです。全社員に常にイノベーティブな発想を促すには、「我々は何よりもイノベーションを重視する」といったコア・バリューによる企業文化が形成されていなければなりません。
3つめは、業績不調からのレジリエンス、回復力の重要性です。変化が激しい経営環境の中、どの企業もずっと好業績を維持することは非常に困難です。不調に陥ることもある。重要なのは、そこからどう回復するか。その局面では、社員の結束力が問われます。この結束力こそ、企業文化がもたらすものです。

松本)こうした企業文化が明確な企業は、共感する人材を集めやすいように思います。

石塚)人は、できるだけ働きやすく、力が発揮できる企業で働きたいと思うでしょう。まさしく“コア・バリュー”に共感できることが、それをもたらすのです。入社する側にとっても、採用する側にとっても、お互いのハッピーのためには、明確な“コア・バリュー”による企業文化を形成する必要があるのです。

≪マテックスの「コア・バリュー経営」導入の経緯≫

石塚)松本社長が「コア・バリュー経営」に着目された経緯を教えてください。

松本)2009年に私が3代目の社長に就任した時にまず考えたのは、「これからどういう会社にしていけばいいのか?」ということでした。当社の創業は1928年で、その時点で80年続いていたわけです。それだけ長く続いたのは、間違いなく何かいいエッセンスがあったからこそ。まず、それが何かをつかむところから始めようと、当社のOBや先輩に話を聴いて回ったのです。

石塚)よい取り組みですね。

松本)そうして当社の歴史を紐解き、当社の良さを抽出しながら、これから新しい人材も迎えつつ、あるべき会社運営をしていくための基軸となるものが欲しくなりました。そこで、経営理念を制定し直すことにしたのです。そして、自分なりにまとめたものが、5つの経営理念です。

石塚)マテックスが何を最も大切にするかという5項目ですね。これを社員に浸透させる必要があります。

松本)はい。そこで、対話重視で事業所を回り、ひざ詰めで社員に語りました。とはいえ難しく考える必要はなく、当たり前の姿勢として自分たちのものにしてほしいと話しました。さらにこの経営理念の浸透をどう加速させるかを考え、海外の事例などを調べていくうちに、石塚先生の「コア・バリュー経営」に出合ったのです。

石塚)ザッポス社のケーススタディですね。

松本)大変素晴らしい考え方だと思いました。そして、経営理念はいわば生まれつきの骨格のようなもので、コア・バリューは筋肉や体質のようなものと考えたのです。つまり、常に鍛えて改善していくことができ、しなやかな組織をつくることができると。経営理念をドライブさせていくために、きちんとしたコア・バリューを持ちたいと考えました。そこで、コア・バリューは社員にも考えてもらおうと思ったのです。理念は、私が歴史や先輩の話を基に抽出しましたので。

石塚)なるほど。参加型ならば、最初から深く共有できますね。

松本)200以上のバリューが集まりました。それらを分析すると、10の共通項にまとめることができました。これを整理して、当社のコア・バリューとしたわけです。

石塚)経営理念の制定からコア・バリューの策定まで、非常にしっかりした考え方とプロセスで行われていますので、企業文化を形成する、地に足の着いたものになっているのではないかと思います。

(後編はこちら)
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