窓を売るのではなく、その価値を売る

右が村田佳壽子さん、左が弊社代表・松本浩志

▲左が村田佳壽子さん、右が弊社代表・松本浩志

松本
アメリカをはじめ、日本以外の主要国では、建物の資産というものが構造体(躯体)の性能で決まるという考え方が当たり前ですよね。一方、日本では性能に目がいかず、表層的なところばかりに価値を見い出している気がします。
村田
アメニティ環境ということですね。1980年代を境に、主要国は地球環境へ目を向けていたんですが、日本だけはアメニティ環境重視へと舵を切ってしまった。コンピューターで制御した高性能エアコンと壁断熱という、自然を支配下に置くような対応です。当時、住宅の寿命は平均20年と言われていました。寿命を短くして建て替えることで建築業界が利益をあげていたため、根本的な解決策へは目がいかず、見た目やアメニティ環境が重視されてしまったんですね。
松本

私たち窓業界も「目に見える」部分は引き続き大切にしながら、目に見えない熱環境や音の問題、構造の耐久性などを、よりしっかりと提案していくべきだと考えています。その中でも窓は、温熱環境に大いに貢献できる部位であるはずなんですが、実際は温熱に脆弱な窓が国内の約95%を占めているのが現状です。時間はかかるかもしれませんが、このパーセンテージを少しでも減らしていきたいですね。


私たちは「エコ窓普及促進会」という、環境省に登録している対策地域協議会を運営しているのですが、大きな花火を打ち上げるというより、地域で開催されているような環境イベントやエコフェアなどに出向いて、窓が抱える問題について発信するというスタンスで、地道な活動を続けています。

村田
日本がこれまで窓問題に目を向けてこなかった、もうひとつの要員として、経済成長があげられます。1968年にGNPが第2位となって以降、順調に成長を続け、最も高かった時の平均給与は400万円以上ありましたから「電気代を節約しよう」「無駄を省こう」と真剣に考えることはなかった。でも今は300万円台になっています。信じられないですよね。
松本
窓から出ていく熱エネルギーを、お金に換算するといくらだと思いますか?と計算して、理解頂いたら、大変な驚きになりますね。

松本浩志

村田
はい。だからこそ、私は今がチャンスだと思います。ようやく、どこに無駄があるのかを真剣に考えるようになっているんです。無駄をなくすこと=地球環境を守ることにも繋がる。「自分の家計を考えて対策しよう」「少しお金がかかるとしても先々のコストと考えよう」という意識が生まれ、国もやっと動き出しましたから。
松本

今がチャンス。おっしゃる通りです。


私は常々企業人として「自分たちが手掛けている仕事に何を期待されているのか」を考えるようにしています。窓業界が扱うガラスは、社会性がとても高いものです。その社会性の高さに気づくこと、どのような姿勢で、どのような価値観で窓ビジネスに臨むかが、一番重要だと思っています。


今年で41回目を迎える展示会イベント「マテックスフェアー」は、当社がお世話になっているお客様にも、その先におられるお客様にも、目の前にある「窓」というものが、どういう役割を果たすべきなのかを、あらためて考える場にしていただきたいと考えています。ただ「窓が売れたらハッピー」という、物売り的な捉え方ではなく「社会性の高い意義のある仕事を任されている」という意識転換を図ってほしいのです。


今日、村田先生とお話しさせていただく中で、その重要性を再確認することができました。特別な新しいことを始めるのではなく、今手掛けているものの重要性に気づく。環境問題を考える企業人として、大切な視点だと思います。

村田
人間は誰しも日々手掛けていると、最初は価値が分かっていても徐々に慣れてしまって「自分の知っていることは誰もが知っている」と勘違いしがちなんです。ところが実際には、マテックスさんの社員にしか分からないこと、知らないことがたくさんあります。その情報こそが価値なのです。窓を売っているのではなく、その価値を売っているのだということをもう一度思いおこしてほしいですね。
松本
本当にその通りです。4、5年前、お客さんが何を期待して窓を買い求めるのかを意識調査したことがありました。その結果、7割の人が「夏暑いのをなんとかしたい」「冬寒いのをなんとかしたい」「結露をなんとかしたい」という要望でした。その悩みを解決できるひとつのソリューションが窓だったわけです。まず「生活者が何を期待しているかに気づく」というのが、基本となるんだと思います。
村田
お客様の方も「窓なんてそんなもんだろう」と捉えているんですよね。例えば結露があれば、結露対策グッズを買って来るわけですが「窓が結露すること事態がおかしいんですよ」というところから話をすると、全然違う世界が見えてくるんです。「窓はそんなもんじゃない」ということを知った時の驚きや感動を広く提供してほしい。自分たちが売っている窓が、地球環境に貢献するものであり、それは後世の人に貢献することに繋がるんだ、ということを再認識してほしいと思っています。

後世のためにも、今こそ責任を果たすべき

松本浩志

村田
今の子どもたちは大変です。私は小学校にも講演にいく機会があるのですが、子どもたちは地球環境問題のことを本当に良く知っているんです。「どうして?」って聞くと「このままでは僕たちが大人になったとき地球はないと思うから」って。今の子は当たり前に実感しているんです。被害者として、恐怖の中で生きている。それを考えると良い思いだけして育ってしまった、今の地球環境をつくってしまった私たちの世代としては、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになります。
松本
本当に私たち世代の在り方がカギを握っていますね。
村田
何億というお金をかけるのではなく、どこの家にも必ずある「窓」に注目する。これは誰にでもできる取り組みです。しかも快適になって、電気代削減で家計が助かった分、家族で美味しいものを食べにいくことだってできるわけです。ただ大切なのは、そこに気づくかどうか、気づいて実行できるかどうか。その気づきを売って歩くというのが、マテックスさんの事業なんだと思います。
松本
そうですね。我々の使命でもあり、この業界にいる人間の使命だと思います。 2017年の「マテックスフェアー」のメインタイトルは「後世への窓」。窓業界では、高性能化による窓の価値を高めてビジネスをしているわけですが、これを間違えると「どれだけの量を売るか」「どれだけ実績をあげるか」といった、数字とのにらめっこになりかねません。そもそも高性能な窓やガラス、サッシは「CO2を削減するためのもの」「エネルギーロスを軽減させるためのもの」「人間の健康にあたえる影響を軽減するためのもの」だと思います。そのことを見失わないために「後世への窓」というタイトルをつけました。これからもその言葉を掲げ、大切にしながら窓の高性能化を進めていきたいと考えています。
村田
私も「マテックスフェアー」に参加させていただきます。後世の人たちの在り方を決めるのは、私たちですから、大きな責任があると思っています。家庭のエネルギー消費は、今や全体の約35%を占めています。だからこそ、自分たちができることから取り組むことが大切なのです。

村田佳壽子

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