マテックスの働き方改革“ポジティブワーク”とは

右が石塚しのぶさん、左が弊社代表・松本浩志

▲左が弊社代表・松本浩志、右が下田直人さん

松本

今回は、当社が日頃お世話になっている社会保険労務士で、“人を幸せにする経営”を追求されている下田直人先生と、いま社会的に大きな関心事となっている“働き方改革”や“ワークライフ・バランス”について考えていきたいと思います。その上で、当社がこれから進めていこうと考えている“ポジティブワーク”について取り上げさせていただき、ご意見をいただければと思っております。


ではまず、“働き方改革”とは何かということから教えていただきたいと思います。連日のようにメディアで取り上げられ、国も力を入れて推進していますね。

下田

長時間労働による弊害などが問題視され、一気に改革していこうという気運や施策が“働き方改革”という言葉に集約されていますね。国が旗を振っている背景には、人口減少社会に突入して、労働生産性をもっと上げていかなければ国が立ち行かなくなるという問題意識があると思います。先進国の中で日本の生産性は一番低いといわれていますから。


そのために、例えば出産した女性が離職しなくても済むように、仕事を持ちながら育児もできる柔軟な働き方を認めるとか、非正規の従業員も正規社員と同様の能力を身につけられるよう教育の機会を提供し、実力の底上げを図るといった施策が求められていると思います。

松本
生産性を上げることが国としての課題ということですね。
下田
ええ。ですけれども、いたずらに生産性を上げることには問題もあると私は思っています。労働者の生産性を上げようとすると、プレッシャーがかかるからです。そのことで精神的に変調をきたすリスクがあります。生産性が上がる人が出ても、一方では逆に仕事ができなくなる人が出て、かつ医療費もかかり、社会全体としてはマイナスとなることも起こるかもしれませんね。決して生産性を上げることを否定するものではありませんが、近視眼的に行うことは避けるべきではないでしょうか。“働き方改革”の真の目的は、人が幸せになることだと思いますから。
松本
改革そのものが目的化しつつある情勢には注意が必要ですね。生産性の問題にしても、グローバル化が進展しているとはいえ、歴史的背景や国民の価値観が異なる国同士で比較することにどこまで意味があるのかは、議論が分かれるところだと思います。

石塚しのぶ

下田直人
株式会社エスパシオ 代表取締役。ドリームサポート社会保険労務士法人役員。特定社会保険労務士。就業規則の作成及び労務管理のコンサルティングを得意としており、全国の商工会議所などでの講演も多い。著書は「優良企業の人事労務管理」(PHP)その他共著も含め10冊ある。
2015年より沖縄に居住し、東京と沖縄を往復する生活をしながら、「人が幸せになる働き方」を追求している。
下田
例えば、有給休暇取得率といった指標もそうです。決して批判するわけではありませんが、数値を上げることが本当に従業員の幸せに繋がっているのかどうかはよく確かめる必要があると思います。「休みを取ったけれども、その間の仕事が溜まってしまった」とか、「休みを取るためにその前後の日の業務調整が大変だった」といった声はよく聞きます。本人は有休を取得したいと思っているわけではなくても、会社が目標として掲げているので仕方なく無理してでも取らなければならなくなっているわけです。数値目標を掲げることが、会社としてのポーズに過ぎなくなっていては本末転倒ですね。
松本
本人の充実感に繋がらなければ、まさに手段と目的がすり替わっているケースですね。“働き方改革”はこれからも議論が進むと思います。企業として、本質を踏み外すことなく進めていかなければならないと思います。

下田直人

“ワークライフ・バランス”とは

松本
もう一つ“ワークライフ・バランス”という言葉もあります。これについてもお教えください。
下田
“ワークライフ・バランス”は随分前から聞くようになった言葉ですね。元々日本では「仕事と育児のどちらもできるようにバランスを取る」といった概念で広まったと思いますが、今では一般的に「仕事と私生活の時間をバランスよく過ごす」といった意味に捉えられていると思います。
松本
この言葉の解釈や受け止め方も、人によっていろいろ違いがあるようですね。仕事と私生活を完全に切り分けてそれぞれの時間を確保するといった考え方があれば、切り分けることなく相互に関連させ合いながら、その人の成長や生活の充実に繋げるといった考え方もあるように思います。
下田
法律的なものではありませんから一律な意味ではなく、その人の置かれた状況によっても変わるでしょうね。どれが正しいとか間違っているということではありません。ただ、私がいろいろな企業を見ていて感じることは、「この人は仕事もプライベートも凄く充実しているな」と感じる人は、双方が不可分となっている場合が多いのです。取引先の人が休日に活動しているボランティアに家族ぐるみで参加し、子供の教育にも活かし、結果的にビジネスを円滑にすることにも繋がっているといったように。仕事の取引先も一緒にオフタイムを楽しみ、そこで形成した人間関係をビジネスにも活かしているのです。
松本
生活のために仕事をしなければならないという人もいるでしょうが、仕事も私生活もどちらも楽しむという、ある意味で両者の境界を超越したスタイルですね。最近、“ワークライフ・バランス”についていろいろな人と話していると、「夢を追いかけている人に向かって『働き方はこうしなければいけない』『プライベートの時間を犠牲にしてはいけない』などと言うのは、とても違っている気がする」といった話になります。二項対立ではなく、どちらも充実し、楽しくて仕方がなく、結果的にバランスが取れた状態になっているというのが理想のような気がしています。

松本浩志

松本浩志
マテックス株式会社、代表取締役社長。平成21年の代表就任以来、経営理念の明文化とその実現を推し進めると同時に、コア・バリューを基軸とした組織づくりとリーダーシップスタイルの転換に取り組む。「窓をつうじて社会に貢献する」ことを第一義に掲げ、CSR大賞「特別賞」や、経済産業大臣表彰である「先進的なリフォーム事業者表彰」を受賞。
下田
全部が繋がっているわけですね。ややずれるかもしれませんが、「西洋と東洋では考え方が違う」という話を聞いたことがあります。西洋は“分ける文化”で、東洋は“分けられない文化”だと。西洋では「あなたと私は違う」と考えますが、東洋は「あなたも私も同じ」と考えるといったようにです。“ワークライフ・バランス”という概念は西洋から入ってきたと思いますが、東洋人の我々は、仕事と私生活の充実は相互に関連し合っているといったほうがしっくりくるのかもしれません。
松本
それが、一人の人間として幸せな状態ではないかと思います。“働き方改革”も“ワークライフ・バランス”も、その言葉の定義が自分の外にあって、それに自分を当てはめようとしても本当の豊かさは得られないのかもしれませんね。逆に、自分の豊かな人生はどうあるべきもので、どうやって近づけばいいかと考える必要があるように思います。
下田
自分の豊かな人生は誰かにつくってもらうのではなく、自分でつくるものですからね。社長も新人も立場は関係なく、そういう意志のある人が豊かな人生を切り拓いていけるのだと思います。

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