マテックスの「コア・バリュー経営」の実践内容

右が石塚しのぶさん、左が弊社代表・松本浩志

▲左が石塚しのぶさん、右が弊社代表・松本浩志

石塚
では、「コア・バリュー経営」として具体的にどういった活動をしているのですか?
松本
社内外の、実に様々なイベントに取り組んでいます。まず社内イベントとしては、「経営理念浸透カフェ」があります。これは、私が折に触れて各事業所を回り、お菓子をつまみジュースでも飲みながら、くつろいだ雰囲気の中で経営理念について自由に対話をしようという場です。この場で大切にしているのは、社員一人ひとりがお互いに尊重し合い、それぞれがかけがえのない存在であることに気づいてもらうことや、我々が担っている仕事がいかに社会的に重要なものであるのか、といったことを理解してもらうことです。また、「マテックスLIVE」という、まさにライブ感覚のワークショップを開いて当社のコア・バリューと同様に大切にしているコア・パーパス(存在意義)を表現してみようといった活動もしています。
石塚
堅苦しい場だとなかなか飲み込めないでしょうが、そのようにくだけた雰囲気だとスーッと染み込んできそうですね。
松本
はい。そのようにして浸透を図りつつ、社員に自由に参加してもらう研修を実施しています。例えば、窓やサッシの業界が取り組んでいくべき大きな課題として、窓が住宅のエネルギーロスの最大の原因になっているという問題があるのです。夏は家の中の熱の71%が窓から入り、冬は室内を温めた熱の48%が窓から逃げているというデータがあります。だからこそ、断熱性能の高い窓を採用する必要があるわけですが、実はこうしたことは生活者にあまり知られていません。そこで、どうすればこの問題を生活者に伝えていけるか知恵を出し合おうといった研修を頻繁に行っています。

松本浩志

石塚
例えば、どんなアイディアが出されているのですか?
松本
窓からのエネルギーロスの話を紙芝居にして、子どもに読み聞かせながらお母さんにも聞いていただく、とかですね。
石塚
なるほど。
松本
また、これは対外的な取り組みになりますが、当社では「エコ窓普及促進会」という団体名称であちこちのイベントに参加し、窓のエネルギーロスの問題を知ってもらうための活動をしています。ほかの対外活動としては、東日本大震災の発生直後から「EcoMado Aid」という名称で支援活動を始めました。仕入先やお取引先と協働して、節電が求められている地域に対して窓まわりにエネルギーロスを防ぐ工夫を施したり、環境負荷を減らす商品をお買い上げいただくと売り上げの一部を支援金として拠出するといった内容です。5年間で数千万円に上りました。熊本の震災の際も同様の活動をしています。当社の直接のお客様である街のサッシ店さんや工務店さんに向けては、お子さんを招いて、窓を扱う仕事の素晴らしさを実感してもらう職業体験イベントなども行っています。日ごろ、なかなか自分のお子さんに家の仕事の素晴らしさについて話す機会などないでしょうから。
石塚
本当に素晴らしい取り組みの数々だと思います。

マテックスの「コア・バリュー経営」の成果と、感想・評価

松本浩志

石塚
こうした一連の取り組みで、どういった成果が出始めていますか?
松本
まず、リーダーシップのあり方が変わってきたことです。それまで、背中を見せて「ついてこい」と引っ張ってきたスタイルがずっと続いてきました。しかし、仕事の中によりやりがいを見出し、豊かさや楽しさも感じられるようにするためには、社員の主体的な取り組みを見守り、応援するリーダーのほうが相応しいというとらえ方ができてきました。
石塚
いわゆる「サーバントリーダー」ですね。
松本
それと、従来、詰め込み型の組織運営になりがちだったところ、社員の自由な発想を大事にしようと、トライ・アンド・エラーも厭わない組織運営のあり方に変わってきました。そして何より私が嬉しく感じている変化は、コア・バリューを追求しようとすると、人の美点に目が行くようになることなんです。短所を追及するより、長所をさらに伸ばすことがコア・バリューに繋がる。そして、人のいいところを見ることを通じて自分もよくなろうとします。こうした相乗効果を感じているところです。
石塚
まさに「コア・バリュー経営」の成果が出ていますね。

松本浩志

松本
では、当社の「コア・バリュー経営」の取り組みに対して、お感じになったことをお話しください。
石塚
こうした一連の取り組みは、社員の方々が考え出したことですか?
松本
全てではありませんが、社員の主体的な取組み事例が増えていることは実感しています。独自の勉強会が立ち上がっている営業所もあるんです。
石塚
何よりも素晴らしいと思うのは、やりたい人が主体的にサークルをつくって取り組んでいるというところです。企業文化とは、まさにこうした自主的な活動を通じて形成されていくものだからです。企業理念やコア・バリューは、額縁に入れて飾るだけでは意味がなく、実際に行動に落としてこそ掲げる意義があります。社員がこうした行動ができる環境をつくられているところが素晴らしいですね。また、企業文化を形成するのは、業務だけでなく課外活動的なことも影響するということがよく表れていると思います。
松本
ありがとうございます。
石塚
もう一つ素晴らしいと感じるのは、ビジネスと諸活動がうまくリンクしていることです。例えば震災の支援も、ただ寄付するだけでなく、ビジネスの展開に組み込んでいます。企業文化が本来の事業活動の土壌になっている証拠だと思いますね。
松本
石塚先生に一つ、伺いたいことがあります。先生が「コア・バリュー経営」で取り上げておられる企業は、オフィスの内装や設備に凝ったり、いろいろな演出をしているところが多いように思います。それに対して当社は、イベントはユニークかもしれませんがオフィスは大変シンプルです。こうした点に何かご意見はありますか?
石塚
企業文化とは独自固有のものですので、それぞれのスタイルがあっていいと思います。例えば、社員の主体性を限りなく尊重するザッポスでは、社員に予算を預けてオフィスの内装も自由につくらせています。環境を重視する企業では廃材を活用したりもしています。ですから、マテックスはマテックスの考え方、それこそ“コア・バリュー”で実践すればいいと思いますね。

前編はこちら